⑱冬が人を強くする

東京でフリーライターをしていたアラフィフシングル女子。東日本大震災を機に東北へ通い始め、2015年にはついに宮城県石巻市へ移住。現在は庭付き中古一軒家を購入し、会社も設立。愛猫のふーちゃんと共に大海原へ漕ぎだした、そんなドキドキハラハラな毎日を記していきます 

冬が人を強くする

今まで暮らした大阪や東京では、

夏が暑い、冬が寒いといっても、

不快だなんだというレベルでした。

しかしここ東北では、

季節に人の生活が牛耳られているとさえ思います。

といっても、私が住んでいる宮城県石巻市など、

まだまだ序の口でありましょう。

たとえば、昨年訪れた山形県では、

車で約2時間ほど内陸に走っただけなのに、

自分の背丈の倍はあろうかという豪雪を体験。

雪が美しいと感じるのは観光客だけ、

住民にとっては悩みを通り越し、

もはや「恐怖」だといいます。

しかも、東北の冬は長い!

いつもお世話になっている

呉服屋のおかみさんによると

「暖房器具はゴールデンウイーク辺りまで

しまっちゃいけない」のだそう。

まっさかあ、と笑いましたが既に4月半ば。

この原稿を書いている今も、

電気ストーブが手放せません。

 

つまり私は、

今後も東北に住む限り、

1年の半分は「冬」だと認識し、

覚悟して暮らさなければならないということです。

築60年の一軒家での厳しすぎる越冬。

その備えも然りですが、

食べていくための「仕事」という面でも、

「冬」と「それ以外の季節」では、

変化をつけなければならないでしょう。

人が出てこなくなり、

消費もおのずと低迷する冬。

街全体がもはや「冬眠」の様相で

景気はグッと落ち込みます。

だったら徹底的に「準備期間」と割り切って、

オンシーズンにはエンジン全開で働く!

それぐらいダイナミクスをつけたほうが、

この地では賢いのかもしれません。

何をやってもうまくいかず、

心が冷えて、絶望的な気分になる。

そんな「冬」の季節は、

人生にもちょくちょく訪れるもの。

特に、私のようなフリーランスだと、

いい時と悪い時が

ジェットコースターのごとく交互に訪れるので、

その都度、一喜一憂していては身が持ちません。

そこで最近、思うのは、

冬の過ごし方こそが大事だということです。

よく言われてきたことですが、

若い頃は冬がただ辛いだけで、

あまりピンと来ませんでした。

しかし、歳を重ねるごとに、

冬の後には必ず春がやってくると

体験的に信じられるようになります。

長さや寒さの度合いはその時々で異なりますが、

とにかく今まで生きてきた中で、

終わらぬ冬はありませんでした。

 

何をやってもうまくいかず、

不安や孤独を感じ、

あがいてもあがいても忍耐を強いられる、

そんな時こそ平常心で

「準備期間」と切り替えることが、

心を健全に保つスキルかもしれません。

さらにこの時期、

必要な準備や学びができるとベストですが、

ただ淡々、黙々と

日々を生きているだけでもいいかと思います。

何をやってもダメだ、

自分の人生は失敗だとあきらめず、

いつかは必ず良くなると信じきること。

冬の後に春が来るのは自然の摂理だと、

心から理解することが肝心です。

 

また、長く厳しい冬をくぐり抜けてきた人ほど、

周りに与えるものが大きい

実り豊かな人生を送るというのも、

自然の摂理にかなっている模様。

静かな笑みをたたえ、

人にやさしく生きている

東北の人々を目の当たりにするたび、

苦難が人を大きくするとは

真理だと感じる、今日この頃であります。

石巻の名所、日和山は春真っ盛り。震災時にはここに、多くの人々が避難。巨大津波が押し寄せるのを言葉を失い、見つめていた場所です

塩坂佳子(しおさか・よしこ)

1970 年生まれ、大阪府高槻市出身。関西学院大学文学部卒業後はアルバイトなどを経験し、25歳でフリーランスのライター兼編集者として開業。2000年に大阪を出て、友人が住む小笠原諸島父島へ。釣り船の手伝いなどをして島暮らしを満喫、その様子を雑誌に連載するなどして2年間の長期滞在を楽しんだ。その後、板橋区へ移住し、東京でのライター・編集業を本格始動。主な仕事は結婚情報誌「ゼクシィ」や「婦人公論」などで執筆。出版社との契約で中国上海市に1年間駐在、現地編集部の立ち上げと雑誌創刊などにも関わった。

東日本大震災後は、震災ボランティアとして宮城県を中心に訪問。2013年には、上海在住のイラストレーター・ワタナベマキコと共に、東北の名産品をユニークなキャラクターにした東北応援プロジェクト「東北☆家族」を立ち上げ。東京に住まいながら活動を続け、2015年秋に宮城県石巻市へ移住。2年間は主に石巻市産業復興支援員として、復興や地方再生を促す街の情報発信を担当した。2017年9月には自分の会社を設立。現在は、自宅兼オフィスとして購入した築50年の庭付き中古一軒家をDIYでリノベーションしながら、愛猫・ふーちゃんと共に新生活をスタートさせたばかり。

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