今年も冬がやってくる
私のような西からの
移住者にとっては、
深まり方が急速すぎる東北の秋。
電気ストーブどころか、
かつては
「禁断の最終手段」であった
コタツもあっさり、セッティング。
もう、寒さに抗おうとする気力は
残されていません。
無心で備える。
受け入れる。
これが、
厳しい自然の中で暮らす人間の
正しい生き方ではないでしょうか。
★
しかし、少し前を振り返ると、
ここ石巻でも、
今年の夏の異常な暑さには
まいりました。
ひとり社長とはいえ、
会社兼自宅である一軒家。
せめて社長室
(広い家が使いこなせず、
だいたいここにひきこもっている
4畳半ほどのダイニング兼仕事場)
ぐらいは、
もう少し快適に過ごせるよう
整備した方がよさそうです。
けれど、エアコンを取り付けるのは、
築50年超えの我が家の歴史で
おそらく初めてのこと。
未だ、前のご家族の品格を
そこかしこに感じる
凛とした風情の一軒家。
華道家の亡き奥様と柔道家のご主人が、
大切にされたのであろう
庭を眺める広縁が、
今ではキャットタワーが堂々の
ニャンコ部屋に。
それだけでも気が引けるというのに、
エアコンなんて
エアコンなんて……。
そんな軟弱なものを
つけてよいものかどうか。
次の夏がやってくるまでの
検討課題であります。
★
そして、昨年の今頃は、
初めての越冬を目前にして、
水道管や道路の凍結など
地元の人たちからさまざまな
「石巻あるある」を聞き、
戦々恐々としていました。
そうでなくても、
街全体が閑散期となり、
飲食店などは商売あがったり。
弊社の売上も、
毎年落ち込むことが予想されます。
ですがもう、
ここまでくると、
大体のことは
「乗り越えられる」
いや、
「乗り越えざるを得ない」。
我ながら
どこで腹が据わったのか分かりませんが、
今年は冬が怖いどころか、
楽しみにさえなってきました。
★
牡蠣にタラにアンコウと
なんといっても旬の味覚がすごい。
友人たちと炬燵に入って
ワイワイ豪華な鍋をつつく、
地元民ならではの
一大アクティビティが
待ち受けています。
そして夜には、
愛猫たちが布団の中に潜り込んでき、
2匹と1人、
ぎゅうぎゅうになって眠るのも醍醐味。
一日中、ひきこもっていても、
寒いから仕方ないよね、
と自分を許せる
このゆるさもたまりません。
東北の長い冬の楽しみ方。
だんだん、
身体にしみこんできました。
塩坂佳子(しおさか・よしこ)
大阪府高槻市出身。関西学院大学文学部卒業後はアルバイトなどを経験し、25歳でフリーランスのライター兼編集者として開業。2000年に大阪を出て、友人が住む小笠原諸島父島へ。釣り船の手伝いなどをして島暮らしを満喫、その様子を雑誌に連載するなどして2年間の長期滞在を楽しんだ。その後、板橋区へ移住し、東京でのライター・編集業を本格始動。主な仕事は結婚情報誌「ゼクシィ」や「婦人公論」などで執筆。出版社との契約で中国上海市に1年間駐在、現地編集部の立ち上げと雑誌創刊などにも関わった。
東日本大震災後は、震災ボランティアとして宮城県を中心に訪問。2013年には、上海在住のイラストレーター・ワタナベマキコと共に、東北の名産品をユニークなキャラクターにした東北応援プロジェクト「東北☆家族」を立ち上げ。東京に住まいながら活動を続け、2015年秋に宮城県石巻市へ移住。2年間は主に石巻市産業復興支援員として、復興や地方再生を促す街の情報発信を担当した。2017年9月には『合同会社よあけのてがみ』を設立。現在は、自宅兼オフィスとして購入した築50年の庭付き中古一軒家をDIYでリノベーションしながら、2匹の愛猫・ふーちゃんとクロちゃんと共に暮らしている。
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