㉕今年も冬がやってくる

東京でフリーライターをしていたアラフィフシングル女子。東日本大震災を機に東北へ通い始め、2015年にはついに宮城県石巻市へ移住。現在は庭付き中古一軒家を購入し、会社も設立。愛猫のふーちゃんと共に大海原へ漕ぎだした、そんなドキドキハラハラな毎日を記していきます 

今年も冬がやってくる

私のような西からの

移住者にとっては、

深まり方が急速すぎる東北の秋。

電気ストーブどころか、

かつては

「禁断の最終手段」であった

コタツもあっさり、セッティング。

もう、寒さに抗おうとする気力は

残されていません。

無心で備える。

受け入れる。

これが、

厳しい自然の中で暮らす人間の

正しい生き方ではないでしょうか。

しかし、少し前を振り返ると、

ここ石巻でも、

今年の夏の異常な暑さには

まいりました。

ひとり社長とはいえ、

会社兼自宅である一軒家。

せめて社長室

(広い家が使いこなせず、

だいたいここにひきこもっている

4畳半ほどのダイニング兼仕事場)

ぐらいは、

もう少し快適に過ごせるよう

整備した方がよさそうです。

けれど、エアコンを取り付けるのは、

築50年超えの我が家の歴史で

おそらく初めてのこと。

未だ、前のご家族の品格を

そこかしこに感じる

凛とした風情の一軒家。

華道家の亡き奥様と柔道家のご主人が、

大切にされたのであろう

庭を眺める広縁が、

今ではキャットタワーが堂々の

ニャンコ部屋に。

それだけでも気が引けるというのに、

エアコンなんて

エアコンなんて……。

そんな軟弱なものを

つけてよいものかどうか。

次の夏がやってくるまでの

検討課題であります。

そして、昨年の今頃は、

初めての越冬を目前にして、

水道管や道路の凍結など

地元の人たちからさまざまな

「石巻あるある」を聞き、

戦々恐々としていました。

そうでなくても、

街全体が閑散期となり、

飲食店などは商売あがったり。

弊社の売上も、

毎年落ち込むことが予想されます。

ですがもう、

ここまでくると、

大体のことは

「乗り越えられる」

いや、

「乗り越えざるを得ない」。

我ながら

どこで腹が据わったのか分かりませんが、

今年は冬が怖いどころか、

楽しみにさえなってきました。

牡蠣にタラにアンコウと

なんといっても旬の味覚がすごい。

友人たちと炬燵に入って

ワイワイ豪華な鍋をつつく、

地元民ならではの

一大アクティビティが

待ち受けています。

そして夜には、

愛猫たちが布団の中に潜り込んでき、

2匹と1人、

ぎゅうぎゅうになって眠るのも醍醐味。

一日中、ひきこもっていても、

寒いから仕方ないよね、

と自分を許せる

このゆるさもたまりません。

東北の長い冬の楽しみ方。

だんだん、

身体にしみこんできました。

とはいえ、冬本番になると猫たちの飲み水も凍ります…

塩坂佳子(しおさか・よしこ)

大阪府高槻市出身。関西学院大学文学部卒業後はアルバイトなどを経験し、25歳でフリーランスのライター兼編集者として開業。2000年に大阪を出て、友人が住む小笠原諸島父島へ。釣り船の手伝いなどをして島暮らしを満喫、その様子を雑誌に連載するなどして2年間の長期滞在を楽しんだ。その後、板橋区へ移住し、東京でのライター・編集業を本格始動。主な仕事は結婚情報誌「ゼクシィ」や「婦人公論」などで執筆。出版社との契約で中国上海市に1年間駐在、現地編集部の立ち上げと雑誌創刊などにも関わった。

東日本大震災後は、震災ボランティアとして宮城県を中心に訪問。2013年には、上海在住のイラストレーター・ワタナベマキコと共に、東北の名産品をユニークなキャラクターにした東北応援プロジェクト「東北☆家族」を立ち上げ。東京に住まいながら活動を続け、2015年秋に宮城県石巻市へ移住。2年間は主に石巻市産業復興支援員として、復興や地方再生を促す街の情報発信を担当した。2017年9月には『合同会社よあけのてがみ』を設立。現在は、自宅兼オフィスとして購入した築50年の庭付き中古一軒家をDIYでリノベーションしながら、2匹の愛猫・ふーちゃんとクロちゃんと共に暮らしている。

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