⑫ふーちゃんがやって来た!

東京でフリーライターをしていたアラフィフシングル女子。東日本大震災を機に東北へ通い始め、2015年にはついに宮城県石巻市へ移住。現在は庭付き中古一軒家を購入し、会社も設立。愛猫のふーちゃんと共に大海原へ漕ぎだした、そんなドキドキハラハラな毎日を記していきます 

ふーちゃんがやって来た!

そもそも、

石巻で家を買うという

斬新な発想をするきっかけとなったのは、

「猫と暮らしたい」の一心でした。

仕事優先と決め込んでいた

都会暮らしでは、

叶わなかった夢のひとつ。

でももう、石巻に来たのだから!

思い切って実現しようと思ったのです。

当然、ペット可の賃貸物件を探しましたが、

JR石巻駅の徒歩圏内となると、

7~8万円のお家賃に。

これは私が15年近く住んでいた

東京の池袋近辺のアパートに支払ってきた

お家賃と変わりません。

家賃を払うために働くような生活は、

もうバカバカしい。

そこで発想を転換し、

家、買っちゃう⁉となったわけです。

もちろん自分の中では8割がた、

冗談でしたけれど。

「300万円なら買います、即金で!」

そう叫んだ時も、

まだ自分の中では

半ば冗談のような気持ちでしたが、

あれよあれよという間に、

現実となりました。

まもなく不動産屋さんを通して契約。

正式な家の引き渡しは、

売り主さんと直接会って現金を手渡す、

2カ月後となりました。

 

その時はまだ、

猫がいませんでしたが、

きっと近いうち、

「運命の子」が私のもとにやってくる。

そんな確信があったので、

自分から探すことはありませんでした。

というのも、

石巻の街中には猫が多く、

昨年の春にも、

母猫とはぐれたらしい子猫が数日間、

通りで鳴き声をあげていたので

友人たちと保護しようとして、

とり逃がしたことがありました。

私たちは石巻駅近くにある

「富貴丁(ふきちょう)通り」という所で

カフェや雑貨屋を営む仲間だったので、

私は勝手に

猫の名を「(富貴丁の)ふーちゃん」と命名。

昨年の子は幻となりましたが、

いつか本物の「ふーちゃん」が

放っておいてもやってくる。

私は仲間たちにもそう、

公言していました。

頼りなさげな印象とは裏腹に

なかなかデキることが

判明してきた不動産屋さん。

掃除や準備が大変だろうからと、

先方に交渉してくれ、

まだお金を払わないうちから

鍵をゲットすることができました。

奥さまに先立たれ、

一人暮らしをしていたと聞く

90代の売り主さん。

何かの事情で関東にいる息子さんの家に

身を寄せたそうですが、

帰ってくるつもりだったので、

家財道具やなんかもそのままでした。

「全部捨ててしまうから、

欲しいものがあればどうぞ」

と言われビックリ。

この件についてはまた次回、

詳しく書くことにいたしましょう。

 

とにかく私はウキウキとして、

もうすぐ自分のものになる

昭和レトロな一軒家に夢中。

暗い色の土壁にはDIYで漆喰を塗ろうとか、

この部屋を寝室にしたらどうかしらん、と、

用もないのに通っては家を愛でるという

遠足前の子どものような

楽しい日々を過ごしていました。

猫のことは、

家が落ち着いてから

ゆっくり考えればいい……。

そんなある日のこと。

富貴丁通りの友人から、

「今夜、みんなでご飯を食べることになったので、

家に来て欲しい」

とFacebookでメッセージが入りました。

もうお昼をまわった時間なのに、

「今夜」とはまた急な。

「ははーん、これは何かあるな」と

すぐにピンときました。

この仲間たちは、

とにかくサプライズが好きなのです。

 

そして夕方、

連絡をくれた彼女の家へ。

他に2人の仲間も既に集まっていました。

いくら平常を装っても、

これからサプライズをするんだ!という

緊張感のようなものが

伝わってきてしまいます。

お互い、知らないふりをして、

適当な会話を重ねるのも10分が限度。

ついに、リーダーの彼女が

しびれをきらしたように立ち上がり、

「お引っ越しのお祝いがありま~す!」

と奥の部屋からうやうやしく、

大きな段ボール箱を抱えてきました。

私はてっきり、

何かプレゼントでも買ってくれたのだろうと

思っていたので、

フタが開いているくたびれた段ボール箱を見て、

初めて「おや?」と思いました。

 

ま、まさか。

 

手渡された段ボールの中を覗いてみると、

箱の角でぎゅっと身を固くする、

毬のような

子猫がいるではありませんか!

驚いて見ていると、

向こうも負けじとするどい眼光で

にらみつけてきました。

顔を近づけると

ケッ!と唾を吐くようなしぐさで

破裂音を発します。

気が強い……。

まるで私の生き写し。

友人たちも口々に、

顏も性格も塩坂さんに似ていると言いました。

 

それが今では最強の相棒となっている

「ふーちゃん」とのファーストコンタクトです。

たった、半年前のできごとでありました。

(つづく)

ふーちゃんは女の子。小さい体で精一杯、にらみをきかせていました。その度胸のよさは共に暮らすのにふさわしい、まさに「運命の子」と確信

塩坂佳子(しおさか・よしこ)

1970 年生まれ、大阪府高槻市出身。関西学院大学文学部卒業後はアルバイトなどを経験し、25歳でフリーランスのライター兼編集者として開業。2000年に大阪を出て、友人が住む小笠原諸島父島へ。釣り船の手伝いなどをして島暮らしを満喫、その様子を雑誌に連載するなどして2年間の長期滞在を楽しんだ。その後、板橋区へ移住し、東京でのライター・編集業を本格始動。主な仕事は結婚情報誌「ゼクシィ」や「婦人公論」などで執筆。出版社との契約で中国上海市に1年間駐在、現地編集部の立ち上げと雑誌創刊などにも関わった。

東日本大震災後は、震災ボランティアとして宮城県を中心に訪問。2013年には、上海在住のイラストレーター・ワタナベマキコと共に、東北の名産品をユニークなキャラクターにした東北応援プロジェクト「東北☆家族」を立ち上げ。東京に住まいながら活動を続け、2015年秋に宮城県石巻市へ移住。2年間は主に石巻市産業復興支援員として、復興や地方再生を促す街の情報発信を担当した。2017年9月には自分の会社を設立。現在は、自宅兼オフィスとして購入した築50年の庭付き中古一軒家をDIYでリノベーションしながら、愛猫・ふーちゃんと共に新生活をスタートさせたばかり。

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