盛り上がってるか~い
「今ね、プロよりも素人を出演させる方が儲かるんですよ。確実に人が集まる」
あるジャズバーのマスターが言いました。
演奏がうまいプロもいいけど、
よく知っている人ががんばっている姿を見るのも楽しいですよね。
終わってから一緒に打ち上げしたりして。
これって政治にも言えることだと思います。
今回の総選挙、いつものごとく投票率は低調でした。
投票に行かない最大の理由は「いい人がいないから」でしょう。
急に自分の名前を大声で連呼されても、あんた誰?って。
選挙になると、新聞やテレビが「投票に行こう」「権利を行使すべきだ」と
決まり文句を繰り返しますが、
それも白々しく響きます。
挙げ句に「白票も一つの意思表示。棄権とは違う」だなんて、
苦しまぎれですよね。
「構図が決まったときには、もう決まってんだよ」
以前、私が地方支局で選挙取材を仕切っていたとき、
政治部出身の上司が教えてくれました。
政党の支部、医師会や農協といった団体、
労働組合などが話し合って「だれを担ぐか」を決めた段階で、
当選者はほぼ決まるというのです。
選挙取材というのは、そのゴニョゴニョとした話し合いを覗き、
各組織の力量、つまり票数を見極めることです。
無党派層が動かず投票率が低いほど、
予想しやすくなります。
政治に関わる人たちは選挙の「せ」の字もないときから、
いろんな会合や催しに参加して組織力を維持し、
それを政治家にチラ見せしながら、
自分たちの求める減税や規制緩和、
補助金増額を求めます。
利益誘導政治ではあるけれども、
権利を行使し「政治に参加している」のです。
だから、選挙戦が始まってから誰に投票しようかと考えているような人は、
圧倒的に出遅れているどころか、
まったくもって蚊帳の外と言えるでしょう。
では、どうすれば良いのか。
自分が立候補したり、候補者を担ぎ出す、
組織を作ることができなくても、
政治の匂いがする場所に顔を出すということが、
第一歩になるのではないでしょうか。
政治家は、私利私欲に走っている人ばかりではありません。
実際に会って話してみると、
とにかくよく勉強しているのが分かるし、
熱い思いを持っていたりします。
チャンスがあれば会ってみて、
つまらない人だと思えば離れればいい。
少しでも見込みがあると思えば、
「こんな政策を」とリクエストすれば良いと思います。
彼らもむげにはしないはず。
風を読む必要があるし、
悪い評判が広まるリスクは避けなければなりません。
こうしたことは微々たる効果しか生まないかもしれません。
選挙は時間がかかるし、
まじめでなければ手に負えません。
だから、いわゆる「市民グループ」は、
大した人たちなのです。
政治家とはなかなか会えなくても、
まずは市民グループの主催するイベントなんかに
行ってみるのもいいかもしれません。
選挙で「盛り上がってるか~い?」と呼びかける側に回るのは大変ですが、
自分にとって「知り合いのライブ」ぐらいのイベントに
近づけることは可能だと思います。
粂 博之(くめ・ひろゆき)
1968年生まれ、大阪府出身。関西学院大学経済学部卒。平成4年、産経新聞社に入社。高松支局を振り出しに神戸総局、東京経済部、大阪経済部デスクなどを経て2017年10月から単身赴任で三重県の津支局長に。妻と高校生の長男、中学生の長女がいる。
コメントを残す