㊱自分のことは自分できめる、だけじゃだめなのだ

大手新聞のベテラン記者が、世の中の出来事や自らの仕事、人生について語ります。私生活では高校生の長男と中学生の長女を持つ父。「よあけ前のねごと」と思って読んでみてください(筆者談)

自分のことは自分できめる、だけじゃだめなのだ

三重県議会が、

ちょっと考えられないことを

やってのけました。

人口減が進む中、

議会の定数増を決めたのです。

全国的にみて、

ほとんど例がありません。

理由は色々と挙げられていますが、

保身としか思えない。

自らを律するルールを決めるのは、

大切なことですが、

それには公正であることが

必須条件であります。

人は欲望から自由ではあり得ないので、

だれかにたがをはめてもらうことも

時には必要でしょう。

やりようはあるはず。

国会でも地方の人口減で

「1票の格差」問題が

長らくくすぶり続けています。

「民主主義の学校」とされる地方から

お手本を示して欲しいものです。

 三重県議会の定数「増」は正確には、

元に戻した、

といった方が正しいでしょう。

元は定数51でしたが、

過疎が進む南部の方で議席を減らし、

来年春の統一地方選から

45にする条例が成立していました。

人口の多い地域との1票の格差を是正し、

議員報酬など

議会の経費を減らすことが目的でした。

しかし、

南部選出の議員を中心に異論が出て、

会派間の勢力争いも絡んで

51に戻す条例案を可決。

賛否の差はわずか1票でしたが、

結局、定数45の条例は一度も適用されず、

定数51が続くことになりました。

「南部の県民の意見を

行政に反映させるため」というのが、

大義名分です。

しかし、県庁の職員も、

市議会議員も、経済界も

「議員の保身。情けない」

「しょせん三重県議会はこの程度」と

あきれ顔です。

「身を切る改革」は、

言うは易し、行うは難し。

定数51でいくなら、

せめて議員報酬を

削減すればと思いますが、

それは別問題らしく、

あるアンケートによると

「報酬削減すべし」という三重県議は

2割しかいませんでした。

そう、議員は定数も給料も

自分たちで決めることができるのです。

国会でも1票の格差が

よく問題になります。

どうみても不公平だよね、

というほどの差がついていて、

各地で訴訟が起こされ、

違憲状態とかの判決も出ています。

格差是正をしようとすれば、

都会の議席を増やすか、

地方の議席を減らすか。

このご時世で議席を増やすのは

よろしくないので、

減らすことになるのですが、

困るのは議員のセンセイ。

そして、力の源泉である

候補者の公認権を握る政党幹部。

違憲かどうかより、

はるかに低い次元で

妥協が図られます。

そして市民団体と裁判所に

叱られるのです。

ならば、裁判所か、

裁判所を後ろ盾とする機関に

区割りや定数を決めてもらった方が

良いのではないでしょうか。

選挙の土俵が、

政争の具になることは

避けられます。

いや、しかし、

選挙の土俵を決める際に、

民主的な手続きを経る

必要がありますね。

法律だって国会で決めて、

裁判所はその法律に則って

いろいろと判決を

下しているわけですから。

ということは、

民意を代表する議員が

「土俵を考えてもらう人」を

承認するという手続きが

必要になります。

 

裁判所なんかを

巻き込むのは難しいので、

手っ取り早いのは、

流行りの「第三者委員会」でしょうか。

第三者委員会は過去の判決、

判例にしたがって

判断することを取り決めておく。

会則からは「総合的に勘案」なんて

曖昧な言葉は排除しておくのです。

議会は、

第三者委員会に議論をゆだね、

その決定を受け入れる条例を作る。

よくある「尊重する」ではだめです。

諮問とか答申とか、

ちょっとでも隙間のありそうなのはだめ。

とにかく、ちゃんとした人に

明確なルールの下で決めてもらって、

文句を言わずに決まったことに従う。

委員会を骨抜きにしようという

動きが出るのは予想されるので、

そこは有権者とメディアが

しっかり監視しなければなりません。

かなりの力仕事になりそうですが、

まずは、地方でこうした取り組みを

やるべきだと思うのです。

もっとも自分たちで

定数削減を決められる議会なら、

こんなややこしいことは不要ですが。

ダルマで有名な勝尾寺(大阪府箕面市)の境内の一角。選挙区の議席を連想してしまいました

粂 博之(くめ・ひろゆき)

1968年生まれ、大阪府出身。関西学院大学経済学部卒。平成4年、産経新聞社に入社。高松支局を振り出しに神戸総局、東京経済部、大阪経済部デスクなどを経て2017年10月から単身赴任で三重県の津支局長に。妻と高校生の長男、中学生の長女がいる。

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