㊸大阪で万博やで

大手新聞のベテラン記者が、世の中の出来事や自らの仕事、人生について語ります。私生活では高校生の長男と中学生の長女を持つ父。「よあけ前のねごと」と思って読んでみてください(筆者談)

大阪で万博やで

2025年に

大阪で万博を開催することが

決まりました。

前回の大阪万博は1970年。

私は当時1歳半で、

見物に連れて行かれたようですが、

当然ながらまったく覚えていません。

しかし、

大阪万博のシンボルである

「太陽の塔」を見るたびに、

関西人としての

誇らしい気持ちが

少しふくらみます。

多くの人にとって

楽しく美しい

思い出として残っていて、

それを何度も

刷り込まれたからでしょう。

次の万博にも

期待がかかりますが、

一筋縄ではいきそうにありません。

 今回の万博誘致は、

有り体に言えば

カネ儲けのためと言えるでしょう。

会場は大阪湾岸で

塩漬けになっている埋め立て地。

パビリオンを建設して

鉄道を延伸し、と

巨額のカネが動きます。

目標通りの来場者数を達成できれば、

地元にお金も落ちる。

経済効果は2兆円との

試算があります。

閉幕後は、

そうしたカネの巡りが止まり

景気は落ち込みかねないので、

大阪府と大阪市はその前に

カジノを開いておこうと

算段しています。

 

 景気を冷やすと言えば、

消費税の税率引き上げ。

消費の減退を防ぐため、

政府はさまざまな

下支え策を打ち出しています。

「ポイント還元」と

耳を疑うような施策まであって、

その規模は2兆円。

増税しようってのにバラマキとは、

それならはじめから

増税なんかしなきゃいいのに、

と思いますが、

前回の増税時の景気減速が

トラウマになっているんですね。

だからこそ

五輪や万博による

景気づけへの期待も

高まります。

 

 こうした視点からの万博批判は

今後出てくるでしょう。

開催準備でトラブルがあったり、

事業費が想定以上に

膨張したり、

関係者の不祥事が

発覚したりすれば、

批判の声がいっそう

高まるのは必至です。

 しかし、こんな風に

お金を中心にした見方は

一面的に過ぎるかもしれません。

楽しいことはあった方が良いし、

お金は何のためにあるのかを考えると、

やっぱり楽しいことに

使うべきでしょう。

「天下の回りもの」ですから、

どんどん動かすのは

悪いことではない。

消費が経済を動かし

社会を豊かにする、という

ケインズ以来の思想が、

政財界の中心に

しっかりと根を張っている以上、

その線で物事を動かすことが

効率的であります。

経済活動の拡大と税収増は、

社会保障制度の将来性を

担保することにもつながる。

一方でもちろん、

消費中心の考え方から

脱却すべきという声もあります。

モノを作り廃棄することが

地球環境に与える影響は、

深刻さを増し、

脱消費社会の声を

後押ししています。

それに沿った動きも出始めました。

消費に分かち合いを

取り入れることで

負担や環境への影響を軽減する

シェアリングエコノミーは、

新しいビジネスの様式として

成立しつつあります。

大量消費大量廃棄の弊害が、

以前より差し迫った問題として

捉えられるようになったのだと思います。

 

こうしたことは多分、

1970年の万博で

描かれた未来社会には

含まれていなかったでしょう。

戦後が終わって

「さあこれから」という時代の節目。

社会は曲がり角ではなく、

上り坂の入り口にあり、

万博はその案内図、

予想図でした。

しかし、

後出しじゃんけん的で

公平性に欠ける言い方ですが、

無邪気な万博です。

 次の万博を控えた現在も、

時代の節目にあるのかもしれません。

ただ今回は、

ここで進み方を変えないと

不幸が訪れるような

暗い予感めいたものがあります。

半面、

うまくシフトチェンジすれば

よりよい世界が待っているのでは、

という期待感もあります。

この時代に未来に対して

無邪気でいることは難しい。

案内図や予想図を描くのは

容易ではないし、

求められていないのかもしれません。

必要なのは

どの道を行くかという

決意表明でしょう。

現在を土台にして

未来があるのだから、

目先のカネや景気も大事です。

しかし、

万博に向けては

青臭い談義も欠かせません。

万博と言えば「太陽の塔」。オーラを放ち続けています

粂 博之(くめ・ひろゆき)

1968年生まれ、大阪府出身。関西学院大学経済学部卒。平成4年、産経新聞社に入社。高松支局を振り出しに神戸総局、東京経済部、大阪経済部デスクなどを経て2017年10月から単身赴任で三重県の津支局長に。妻と高校生の長男、中学生の長女がいる。

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