⑭失礼な取材者たち

東日本大震災で被災し、避難所で3ヶ月、仮設住宅で3年間暮らしたお寺の和尚が、奇跡の一本松や巨大なベルトコンベアで全国に知られることとなった故郷、岩手県陸前高田市のことを書いていきます。フレンチブルドッグのハナさんは震災でかつての愛犬を亡くした和尚のために、妻と娘たちが連れてきてくれた新しい相棒です

失礼な取材者たち

来月は震災から7年目となる。

命日が近づくとメディアが特集を組んだり、

陸前高田市を訪れる人が増えて来る。

地元の人たちもなんとなくそわそわ、

中には体の変調を訴える人もいる。

月命日である11日に、

毎月お檀家さんたちと

続けてきた念仏会(ねんぶつえ)。

2月の念仏会には

ある団体の人たちが活動の一環として

参加してくれた。

御詠歌(寺々を巡拝する人が、そこの仏をたたえてうたう歌)の

グループにその団体の会員さんがいて、

参加を呼び掛けてくれたそうである。

 

これには裏があって、

今月初め頃、

某国営放送から念仏会の取材をしたいとの申し出があり、

寺庭(住職の妻。つまり私の妻)が対応し、

御詠歌の会員が許可をすれば構いませんと、

前述の団体の会員さんを紹介し

許可をもらい取材を受けることとなった。

昨年もこの某国営放送が来たが、

カメラの不調で映像が撮れず

前回来た時と同じ様に

カメラを回し取材とのことだったらしく、

いつもの念仏会では人数も少ないので、

その団体の活動の一環として参加されたのだが、

2日前になってカメラもはいらず、

写真もなし。

取材もなし。

ただ記者1人が参加ということになりましたとのこと。

なんてっこったい!

ただ振り回されてしまった感があるだろう。

団体を紹介してくれた会員さんには

申し訳ない気持ちであったが、

代表の方の挨拶で、

「貴重な体験をさせて頂いた」という

お言葉をいただき、有り難かった。

初めて木魚を叩いたという人や

お念仏も宗旨が違うので初めてという人もいたが

ポクポクと皆揃って木魚を叩き

震災で 亡くなった方々のご供養をした。

念仏会後にはその団体のご招待で

御詠歌の会員さんたちと食事をして

懇親したとのことである。

それにしても、

取材陣にはあきれる。

陸前高田のかつての中心部を望む高台にある我が寺は、

たしかに格好の撮影場所であるが、

以前は境内に勝手に入って撮影していた輩もいた。

住職である私が歩いていても挨拶ひとつなく、

勝手に車を乗り入れ当たり前の様な態度。

彼らが去った後には、

タバコの吸い殻だけが残されていた。

普段はまったく取り上げなくなったのに、

この季節になると急にバタバタと

取材に来るメディアたち。

そして今回の件。

声をかけてくれた御詠歌の会員さんが、

「念仏会に1人多く参加(記者のこと)してもらえたので良かったです」と。

そう考えることができるとはとても素晴らしい。

私はこんな話があるものか!

と怒りの気持ちなのに。

今後取材は一切、お断りと

境内立ち入り禁止とさせていただきます。

前回に引き続き、

取材拒否宣言。

念仏会(ねんぶつえ)は、東日本大震災の犠牲者を弔うため、毎月11日に開催。既に60回を超えた

1958年生まれ。岩手県陸前高田市にある浄土寺の住職。以前は併設の幼稚園で園長も務めていたが、東日本大震災で寺は大規模半壊、園舎は跡形もなく流され現在休園中。奇跡的に家族の中には犠牲者が無かったが、愛犬一匹を失い、自身も避難所で3カ月、仮設住宅で3年間の生活を余儀なくされた。最大規模の被災地にある寺の住職として、犠牲者の魂や遺族たちの心を支え続けている。現在は妻と震災後にやってきたフレンチブルドッグのハナちゃんと生活。3人の子どもたちは成人し、それぞれ東京などで暮らしている。

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