⑪心が壊れていく過程

普通の主婦が突然のうつ病発症!「心の風邪」という言葉が世に出始めた頃でした。約10年の闘病生活から抜け、今年になって自ら一錠の薬も飲まなくなった筆者。この連載は、一度は壊れてしまった主婦が自分だけでなく家族の笑顔も取り戻すための奮闘記です。

心が壊れていく過程

自分の生息区域は

「魔の三角地帯」だと思っていたのは

結婚してすぐの自分自身で、

他人には言えませんでした。

自分がなんて可哀そうなんだと

悲劇のヒロインにでもなったように

憐れんでいました。

あんなに自由に生きていた

独身の頃とはまるで違う。

この土地が嫌いになっていく自分をも

嫌いになっていきました。

本当は友人とランチに行ったり、

お茶のみをする時間も欲しかったけれど、

毎日が慌ただしく過ぎていきました。

「自営業は自由業」だと思って結婚したはずなのに、

義母から『石巻では走らないで』と

言われた事を忠実に守り、

ストレス解消として大好きだった

マラソンも封印していました。

私は、嫁、妻、母、

そして自営業の家族従業員という

トライアスロン以上の毎日を過ごしていました。

一緒にレースに出場する事を夢みて

 

夫にマラソンを勧めたのに、

大会に出場するのは、

マラソンにはまった夫ばかりで、

彼は一人で行動するようになっていきました。

国内はもちろんですが、

海外のマウイマラソンなど自営業をいいことに

出張扱いで一人で申込みをして、

一人で行くようになりました。

その間、会社の従業員には

海外に行っている事を悟られないようにし、

連絡事項のみの電話の対応をしますので、

家族として情けなく思えてきます。

もう共に生きる夫婦というよりは、

「自分を置いてきぼりにした会社の上司」としか

見ることができません。

また「父親なのに子供の事は私にまかせっきりで、

自分は自由にお金を使う人」であり、

とても不満を持っていました。

長男が小学一年生に入学した頃ですから、

結婚して6年目くらいから

徐々に不平不満が心に積もってきて、

イライラを子供たちにぶつけたりしました。

そうして「こんな子育てをする自分は、

母親失格だ」とさらに自分を責めるのです。

もう本当は疲れ切っていて、

会社を辞める事や結婚生活を辞める事で、

自分自身の心を守ればよかったのですが、

実母との確執でそれもできません。

「今度離婚したらなんていわれるだろう。

子供たち三人を引き取るには、

私には親権をとれるほどの経済力がない。

私一人だけ逃げるわけにはいかない。

なぜなら、私はこの三人の母親だから」

何度も何度も思いとどまる理由を見つけては、

日々の生活に戻るしかない生活。

ノイローゼに近い状態になっていた事も

気がついていましたが、

誰にも相談することができないのです。

 

長男が小学3年、次男が小学1年の夏休み。

いつもの通りお昼には自宅に戻り

子供たちに昼食を食べさせました。

午前中は二人とも

学校のプールに行ってきたようなのですが、

何か私の気にいらない事をしたのでしょう。

私はギャーと吠えるように激怒して、

テーブルの上にあったプチトマトの入ったざるを

部屋中にぶちまけたのです。

天井は赤い水玉になりました。

息子たちも

母親のあまりの憤りに驚いて泣きました。

それを見た私自身も自分に情けなくて、

子供たちにもこんな思いをさせて

申し訳なくて、ワンワン泣きました。

「ごめんね、ごめんね」と言って泣きました。

今でも思い出すと涙がでます。

どうしてこんな状態になるまで、

自分をほっぽりだしておいたのでしょうか?

 

頑張る事が大事だというけれど、

いったいどこまで頑張ればいいのでしょう。

「月平均で80時間以上残業をしてまで、

がんばらないでください」という

過重労働に対する指標ができたのは、

つい最近です。

しかし自営業で、

電話の首輪にしばられながら、

母親業も主婦業もしている状態は、

労働時間に換算できません。

知らず知らずのうちに心を疲弊させて、

さらに自分を責め、

相手を責める言葉の刃で心を傷つけ、

それでもその状態から逃げる事もできない。

私のような思いは特殊かもしれませんが、

どうか皆さんは心のSOSに気づいてください。

【Seiko】    宮城県仙台市出身。高校卒業後は通信関係の会社に就職。23歳で最初の夫と「成田離婚」を経験し、30歳で二度目の結婚を機に退職。石巻市に移り住み、3人の子供をもうけるが、2006年頃から心の病を発症。「うつ病」と診断され、約10年間の闘病生活を余儀なくされる。今年になって自ら一錠の薬も飲まずに生活。現在は懸命に社会復帰を目指している。

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