④海のものでも山のものでも

東京でフリーライターをしていたアラフォー独身女子。東日本大震災を機に東北へ通い始め、2015年にはついに単身、宮城県石巻市へ移住。現在は庭付き中古一軒家を購入し、会社も設立。愛猫のふーちゃんとふたりで大海原へ漕ぎだした、そんなドキドキハラハラな毎日を記していきます 

海のものでも、山のものでも

前回の記事で少し予告しましたが、

私が友人のイラストレーター・ワタナベマキコと

共に立ち上げたキャラクターブランド『東北☆家族』には、

どえらいテーマソングがあるんです。

そんじょそこらの人が創った曲じゃありませんよ。

作曲作詞は、

なんとあの矢野顕子さん!

同姓同名の別人でもありません。

正真正銘、あの、矢野顕子さんです。

そんなの嘘だろー!と思うでしょうが、

本当なのだから仕方ありません。

繰り返しますが、正真正銘、

あの、矢野顕子さんです。

 

なぜそんなことが実現したのか、

詳しくは東北☆家族サイトのほうで書きましたので、

興味のある方はこちらをお読みください

とにかくここで改めて声を大にして叫びたいのは、

曲の凄さについてです。

出だしは東北の田舎っぽく、

素朴かつ明るいリズムのピアノから始まります。

歌になると、あの矢野さんの声ですから、

現実離れした絵本の世界に

一気に引き込まれたような気持ちになります。

東北にはおいしいものがいっぱい!

海のものも山のものもいっぱいある!!

 これはまさに、

『東北☆家族』そのものの世界観。

しかしながら、

油断して聴いていると、

徐々に徐々に、

厳しく、強い歌詞とメロディに引き込まれていき、

最後にはなんかこう……

張り手を食らったような。

そんな衝撃に、大きく心、揺さぶられるので要注意です。

歌詞の内容には、

石巻で矢野さんに話を聞いてもらった

被災者の言葉が存分に活かされています。

それはたった数時間の出来事でしたが、

真の天才に、時間や回数はまったく関係ないのですね。

秋に石巻へ来てもらい、

冬が過ぎ、

春になったある日。

矢野さんサイドから「できたよ」と

この曲の音源がメールで送られてきました。

私は散歩の途中、

スマホで受け取り、

それを歩きながら聴いていたのですが、

足が止まり、

涙があふれ、

動けなくなったのを覚えています。

 

「どえらい曲をいただいてしまった!!」

 

そこで初めて、

私は自分のこれからのミッションを理解したように思います。

 

あの矢野顕子さんに、

これほどすごい曲を創らせた東北の人々の体験。

誰の人生にも起こりうる不条理、苦難であり、

それを乗り越え、生きていくことが人生なんだと。

それこそがまさしく「人生」というものの正体であり、

順風満帆でなければ生きる価値がないなどという、

その価値観は人造のまがい物なんだと。

生きるべきなんだ、

自分から死んではいけないんだ、

命の終わりは天が決めるのだということ。

そのようなことを、

私は発信し続けなければいけない。

なぜだかそう、感じました。

 

他のことでは私の人生、

それほど思い通りにはいかなかった。

でも、「ライター」という道でだけは、

なぜだかスイスイーと常に扉が開かれ、

恵まれてきたように思います。

自分でもうっすら、不思議に思ってきました。

その理由が、矢野さんの曲を聴いた瞬間に、

理解できた気がします。

 

「これから死ぬ気で伝えていけよ。

それは、意義のあることだから」

 

そういう、

天の声が聞こえたような気がしたのです。

(つづく)

塩坂佳子(しおさか・よしこ)

1970 年生まれ、大阪府高槻市出身。関西学院大学文学部卒業後はアルバイトなどを経験し、25歳でフリーランスのライター兼編集者として開業。2000年に大阪を出て、友人が住む小笠原諸島父島へ。釣り船の手伝いなどをして島暮らしを満喫、その様子を雑誌に連載するなどして2年間の長期滞在を楽しんだ。その後、板橋区へ移住し、東京でのライター・編集業を本格始動。主な仕事は結婚情報誌「ゼクシィ」や「婦人公論」などで執筆。出版社との契約で中国上海市に1年間駐在、現地編集部の立ち上げと雑誌創刊などにも関わった。

東日本大震災後は、震災ボランティアとして宮城県を中心に訪問。2013年には、上海在住のイラストレーター・ワタナベマキコと共に、東北の名産品をユニークなキャラクターにした東北応援プロジェクト「東北☆家族」を立ち上げ。東京に住まいながら活動を続け、2015年秋に宮城県石巻市へ移住。2年間は主に石巻市産業復興支援員として、復興や地方再生を促す街の情報発信を担当した。2017年9月には自分の会社を設立。現在は、自宅兼オフィスとして購入した築50年の庭付き中古一軒家をDIYでリノベーションしながら、愛猫・ふーちゃんと共に新生活をスタートさせたばかり。

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