③『dignity-ディグニティ』

東日本大震災が起きるまでは、福島県との県境に近い宮城県丸森町の里山で、家を手作りし、自給自足に近い生活を送っていた5人家族。原発事故の一報を受け、夫の母国、イギリスへ渡ることを決断。着の身着のまま日本を脱出したあの時から今日までを妻であり母である、チエミが振り返ります

『dignity-ディグニティ』

身長192センチ、ヒゲをたくわえ、

肩には、その日たまたま練習があったクリケットのバットの柄が

顔をのぞかせたスポーツバックをかついだ白人が、

「お疲れ様です~」と日本語で言いながら

東電の正面玄関に入っていく姿は、

完全に、幾人もの警備員の盲点をついてしまったようです。

 

宮城県丸森町という里山の自然の中で、

無邪気に遊ぶ子供たちの写真をいっぱいに並べたテーブルを囲み、

ギャビンさんと東電の社員数名は、

声を荒げることなく何時間も英語で話しました。

決して、賠償しろとか原発を止めろとか、

そういう話ではありませんでした。

“今、大人たちの足元で何が起きているか”、

ギャビンさんはそれを伝えなければならないと思ったのです。

『dignity-ディグニティ』、

その頃よく、ギャビンさんの口から出た言葉でした。

大学受験で習った記憶はありましたが、

それまで日常生活の中では、

あまり耳にしたことがありませんでした。

日本語の、『尊厳、自尊心』に一番近い英語です。

父として、大人として、男として、夫として。。。。

いつも、ギャビンさんという人の中心にあるのは、

このdignity なのだ、はっきりとそう思いました。

それを中心に彼の言動すべてが形作られています。

そこには、迷いや恐れが入り込む隙間は一切ありません。

私たちそれぞれが、本来、

『自分の中心』に持っているものがあるのだと思います。

普段は隅に追いやられ、

忘れ去られていることも多いかもしれませんが、

それは、何か決断をしなければならない時に

大きな柱となって姿を現してくれるのだと思います。

(つづく)

原発事故前、福島県に近い宮城県丸森町。桑の木の枝に作ったブランコで遊ぶ長女、当時7歳

【オールライト千栄美】:1972年石巻市生まれ。イギリス人の夫と長女(16歳)、長男(15歳)、次男(12歳)の5人家族。再生可能な環境開発を専門とする夫と共に、“都会とは全く違う環境で行う、ビジネスマン向けリトリート施設の建設”という構想を抱き、2008年、宮城県と福島県の境にある小さな山里に移住。その構想の第一歩として、“西洋と東洋の伝統に自然を融合させた新しい技術”をコンセプトにした家づくりを2011年3月11日午後2時45分(つまり、東日本大震災勃発の瞬間)まで家族で行う。その後、夫の母国イギリスへ。現在は、オンラインで日本に英語レッスンをお届けする【英語職人】を生業とする。https://chiemiallwright.wixsite.com/online-eikaiwa

2 件のコメント

  • 千栄美ちゃん、こんにちは貴女のお父さんの友人の菊田です。子どもたち、大きくなりましたね❗️ギャビンさんも貴女も元気そうで、なによりです。先日、Calynのたぶんデビューの時のミージュックビデオが、私の所で見つかって、お父さんの所に持って行きました。Calynとは、FBで友達となっています![よあけのてがみ]これからずっと読ませていただきます!

    • 菊田さん。メッセージ頂きまして、ありがとうございます。子供の頃(もう35年以上も前です!)は本当に色々なことを教えていただきました。今でもよく覚えています。今後とも家族一同、よろしくお願いいたします。(チエミ)

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